
- The company: ダッソー・システムズ株式会社
- Service:
多様性はイノベーションの源泉” 女性活用を促進するインクルーシブなチームづくりのために
フランスに本社を持つ世界的なソフトウェア会社、ダッソー・システムズの取り組みについて伺う後編では、営業部門、技術部門を統括する男性シニアマネージャー3名に登場いただきます。女性活躍についてリーダーとして、男性アライとして意識していること、インクルーシブなチームづくりや多様性を生かすカルチャー醸成についてなど、技術部門の350名のチームを束ねるフランス出身のセバスチャン・カーデットさん、直販営業部門でインダストリーセールスを統括する千葉 隆之さん、ブランド部門を統括する水野 貴士さんにお話を伺いました。
ダッソー・システムズ株式会社
ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを通じて、150ヵ国以上、あらゆる規模、業種の37万社以上に製品やサービスを創出、製造することで持続可能な革新を生み出し、価値を提供している。 公式サイト: |
“多様性はイノベーションの源泉”
女性活用を促進するインクルーシブなチームづくりのために
それぞれのキャリアの中で感じた女性の活躍推進の重要性
―― お三方は営業、技術部門を統括されていらっしゃいます。どのようなキャリアを歩まれ、その中でどのように女性活躍の推進を意識されましたか?
“女性活躍が当たり前のフランスからみた日本”
カーデットさん:
私はエンジニアとして訓練を受けた後、2001年に仏ダッソー・システムズ本社に研究開発職として入社し、その後サービス部門、事業開発やマーケティングなど複数の役職を経験しました。
2008年末、日本オフィスに配属され、日本を拠点に、中国、台湾、韓国などアジア地域を担当し、その後、日本の直販営業部門の技術チームのリーダーなどを経て、2020年に現在の日本の技術部門の責任者に就任しました。
フランスでは、女性管理職が多く、職場のジェンダー平等を議論する必要がないほど女性が活躍していて、多様なメンバーのいる環境を当たり前だと感じていました。また、フランスの女性はリーダーシップを発揮することを好むため、この点でも日本の状況とは違いがあります。
改めて女性活躍推進を意識したのはアジア圏で働くようになってからです。日本だけでなく韓国や中国でも、当時企業の多くが男性中心でした。女性のほとんどがバックオフィスの仕事に就いていたことも私にとって驚きでした。フランスでは女性があらゆる部署で活躍していたためです。
2015年に管理職に就いて以来、多様な人材の確保に取り組んできましたが、エンジニアリングの分野では携わる女性がそもそも少なく、管理職を志す女性を見つけるのはチャレンジだと感じています。
現在、統括する約350名のチームの中で、管理職は50名前後で、そのうち女性管理職は5名未満です。チーム全体における女性の割合は15%弱なので、健全なバランスを保つためには、少なくとも15%の女性管理職を確保することが私の目標です。
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セバスチャン・カーデット(執行役員 技術本部長)フランス出身。エンジニアとしてキャリアをスタートし、2001年に仏ダッソー・システムズに入社。2008年に日本オフィスに拠点を移し、欧州とアジアでリーダー職を担う。技術営業、エンジニアリングコンサルティング、製品開発、事業開発において確かな実績を持ち、複雑な多文化環境下で組織を変革し、収益成長を推進し、高パフォーマンスチームを構築する能力で高く評価されている。ダッソー・システムズで20年以上の経験を持つ経営幹部として、大企業のデジタルトランスフォーメーション支援を専門とし、現在は、日本におけるコンサルティング&サービス組織を統括。300名以上の従業員を管掌している。 |
“「女性が活躍するのは特定の部署」という先入観からの脱却”
千葉さん:
私は大学卒業後、日本企業を経て、外資系のIT企業を2社ほど経験し、2002年に当社に入社しました。パートナー営業部でのセールスマネージャーなどを経て、2017年から製品別の部門でのビジネスリーダー、その後、業種別のお客様を担当し、2025年から執行役員として営業部門を統括しています。
2002年に当社に入社した時点で、女性も多く活躍していましたが、主にファイナンスなどバックオフィスやマーケティングなどの部署に在籍していました。当時、私自身も女性が多いのは特定の部署だという先入観がどこかにあったように思います。
違う感覚を持つようになったのは、2017年に統括したチームでの女性の働きぶりを見たころからでした。営業職にも技術職にも女性がおり、活躍していましたし、女性マネージャーに至っては、チームに活気をもたらしていたと思います。皆、それぞれの強みを発揮していると感じ、女性のチームメンバーやリーダーが少ないことに疑問を持つようになりました。
私が新卒で入社したころは、営業を含む「総合職」と事務職がメインの「一般職」という線引きがあり、同期入社した総合職80名ほどの中に女性は一人もいませんでした。当社で採用や人材育成にも携わってきましたが、「管理職に占める女性の割合を30パーセント」とする目標や社会全体の後押しもあり、少しずつ女性の活躍をサポートする体制に変わってきていると感じます。
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千葉 隆之(執行役員 本部長 CSE営業本部)大学卒業後、日系企業に就職後、1995年に外資系PLMベンダーに転職。営業職として、ハイテク・産業機械・自動車業界などの製造業を担当し、数々のお客様のデジタル化のプロジェクトに従事。2002年にダッソー・システムズに入社し、2008年にパートナー営業部のマネージャー、2012年同部署のディレクターに着任。その後、CATIAブランドリーダー、自動車営業統括ディレクター、製造セクター(自動車・航空宇宙・ハイテク・産業機械)担当ディレクターなどを歴任し、2025年より執行役員CSE営業本部長に就任。 |
“前職で、初めての女性営業マネージャーを登用”
水野さん:
私は、日本企業のSEとしてキャリアをスタートし、その後30歳で自ら提案する側を経験したいと営業職に転身しました。そこから法人営業を担当するようになり、昨年から当社に加わってブランド統括の営業責任者を担っています。
女性活躍を強く意識したのは前職で営業の責任者だったときです。私の統括する部署で、初めて女性を営業マネージャーに任命しました。
前職では営業成績の上位を毎年女性が占めるほど女性が活躍していて、初の女性マネージャー候補の方の経験値も能力も十分でした。しかし、本人は、周囲の営業職の男性に上司として受け入れられるのか、対顧客にしても、男性が優位な製造業の担当で、女性の営業マネージャーでは下に見られてしまい、交渉がうまくいかないのではと懸念していて、マネージャー職を担うことを躊躇していました。
本人と対話を繰り返し、始めは直属の部下も少ない人数でスタートするなど、様々なサポート体制で挑戦してもらうことで、不安を自信に変えていきました。この経験で女性登用により組織が活性化することを実感し、今後も多様なチームづくりを積極的に推進したいと感じました。
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水野 貴士(執行役員 ブランド統括本部長)大学卒業後、日系企業にてSE、プロジェクトマネージャーの経験を経て、外資系ソフトウェア会社に営業として転職し、製造業を中心に、データベースライセンスやERPパッケージの販売を経験。2010年に外資系PLMソフトウェア会社に転職後、大手自動車メーカーを担当し、モノづくりにおけるデジタル活用について長きに渡り従事。直販営業組織のマネージャーを務め、また営業の育成やチームビルディングに貢献し、会社の変革期を長期に渡り支援した。2024年末に、ダッソー・システムズに入社。ブランド統括の営業責任者として、お客様、パートナー様へダッソーが持ち合わせる価値を届けるため邁進中。 |
多様なチームはイノベーションをもたらす
――千葉さん、カーデットさんはダッソー・システムズに長く勤められていますが、社内のインクルーシブなカルチャーに関して変化を感じる部分はありますか?
千葉さん:
私が入社した2002年は100人程だったところから、今は日本に900名ほど従業員がいて、規模も変わり、間違いなく多様化していると感じます。M&Aなどを経て会社自体が統合され、異なる組織のカルチャーも取り入れられて変化が加速しました。新卒からシニア世代まで世代も様々で、国籍も15か国以上の人が在籍しているなど、多様なメンバーがいる環境です。
カーデットさん:
多くの統合の中でも、転換点は2010年のIBM社の一部部門の買収だったと感じます。その時点で当社は150人規模に対し、買収した部門も150人規模で、日本オフィスの規模が倍増する大きな買収でした。統合された組織の中には、技術や営業部門で管理職に就いていた女性が多くいて、買収後も管理職として加わったため、当社の事業部門に女性管理職が誕生することになりました。当時の経営陣に意識の変化が生まれ、社内で女性をエンパワーする大きなきっかけになったと感じます。
――水野さんは昨年2024年に転職され、社内のカルチャーをどのように感じますか?
水野さん:
良い意味でカルチャーショックを受けました。営業組織をみても、日本人だけというケースは稀で、多様なバックグラウンドの人が一緒に仕事をし、そのことが当たり前として受け入れられています。それだけ、様々な意見が出ますし、やり方も異なるので、コミュニケーションの重要性を感じ、自分自身も変わっていかなければと日々刺激を受けています。
今後もより多様性を生かすチームをどう作り、コラボレーションを生んでいくかがミッションだと思っています。
――多様性があることのメリットをどのように感じていますか?
カーデットさん:
多様性はイノベーションの源泉です。ジェンダーや経験年数、管理職経験の有無など、多様なメンバーでプロジェクトに取り組んだ際、より優れたソリューションが生まれることを自ら経験してきました。
同質的なメンバーが集い、似た考え方をすると、同じようなソリューションに集中しがちです。しかし属性の異なるメンバーが集まるチームでは、異なる視点やアプローチが存在し、多様なニーズにこたえるイノベーションが生まれます。また、多様性は、リスクや優先順位を管理する上でも効果をもたらすと感じています。
営業や技術分野でより多くの女性が活躍するために
――営業職や技術職に女性が少ない点に言及がありました。この分野で女性が活躍する利点をどう感じますか? また、女性リーダーを増やしていくにはどんなことが必要でしょうか?
カーデットさん:
現時点では、採用できる技術職の層には圧倒的な男女の人数差があり、これはすぐに埋められるものではありません。そのため、短期的な視点と長期的な視点を分けて考えています。
短期的には、採用時には必要に迫られたニーズがあるため、迅速な対応が求められます。結果として、女性採用拡大とビジネス上の必要性のバランスを取るのが困難な場面も多くあります。
一方で、注力すべきは中長期的な視点です。今から行動を起こすことで、中長期的にポテンシャル層を増やすことを目指しています。例えば、京都女子大学との包括的協定を締結し、女性技術者の人材育成を行う取り組みや、日本の政府機関とも連携し、若い世代に対して、STEM分野のキャリアパス選択を支援するプログラムの構築も行っています。
さらに、新卒採用にも力を入れています。「Japan Graduate Program」として、入社から1年間、未来の働き手になるための知識やノウハウの啓蒙教育を行うプログラムがあります。将来を見据えて採用し、人材を維持することで、おそらく5年から10年で成果が見えてくるでしょう。
日常のプロジェクトの中で、女性管理職を登用し、成功をサポートする努力も続けています。社内の女性リーダーポテンシャル層に焦点を当てた取り組み、WiLD(Women’s Initiative and Leadership Development)*に参加した女性のうち、私のチームでは少なくとも1名が管理職に就いています。WiLDは、男性側の意識を変えてきた点でも意義を感じます。女性従業員に対して、リーダーや管理職を担うことができる、より対等な従業員としての意識の醸成に貢献しています。
千葉さん:
営業に関しては、一般的に、世の中のB to Cのビジネスを考えると、例えばショップ店員など、女性の営業が多く活躍していて、コミュニケーションに長けている印象があります。それが、Bto Bになったとたんに、男性中心の世界になっています。
あくまでも傾向としての話ですが、男性はディテールにフォーカスする人が多い一方で、女性は俯瞰して見る視点があると感じます。営業組織に多様性があることのメリットはそういう面で表れてくると思います。
もし、女性が営業職に就く際の障壁があるとすれば、今まで男性が多い部門だったことによる先入観ではないでしょうか。お客様側でも、女性に対する理解がない組織だった場合に、やりづらさはあると思います。そこはチームとしてどうサポートするか。1人の女性の営業担当に任せるのではなくて、会社として体制を組んでやっていく必要があります。
水野さん:
営業部門の女性リーダーを増やすには、新卒から採用し、営業としてのスキルをつけて、ステップアップしてもらうのが一つです。ジョブローテーションにより、技術職なども経験すると様々な見方ができ強みになります。
チームをつくる際は、なるべく女性が複数人いるよう、女性が孤立しないよう意識しています。そうすることで、お互いに相談役になれたり、競争原理が走るため刺激にもなったりします。相乗効果が生まれるようなチームづくりを意識しています。

――リーダーとして、また女性活躍を支持する男性として、インクルーシブな職場環境をつくるために取り組まれていることを教えてください。
カーデットさん:
インクルーシブな環境を促進するのは簡単ではありません。なぜなら、私自身、女性活躍を支持する男性であっても、自分の属性から起因する何らかの無意識のバイアスを持ってしまうからです。
私と属性の近い人は、私の意図や発言を理解しやすい一方で、属性が異なるメンバーには伝わらないこともあるかもしれません。そのため、コミュニケーションの方法について、対話の場で「私に何を変えてほしいか」をチームメンバーに尋ねるようにしています。これは終わりのない取り組みです。日常的に全員と直接関わることは難しいため、チーム全体に向けたアンケートも実施し、そのフィードバックを改善に生かしています。
また、5年前から定期的な対話の場として「ラウンドテーブル」を実施しています。人事部門と連携し、チームから毎回異なる8名を選出して、「自チームの競争力」などのテーマについて、クローズドな場で自由に議論しています。
議論の中で得られた良いアイデアや提案については、経営陣との協議に持ち込むこともあります。実現には時間を要しますが、少なくとも「こうした意見が寄せられた」「こんな提案があった」と可視化しています。
――多様なチームをマネージメントするには難しさも伴うと思います。最後に、多様性を生かしたチームを作る上でのメッセージをお願いします。
千葉さん:
大切なのは、コミュニケーションをとる際に、先入観や固定観念に縛られないこと、決めつけないことです。実際実行するには難しい面もありますが、その人のバックグラウンドや考え方を理解するためには、違いへのリスペクトが重要です。
例えば、自分にとっては明らかに「黒」に見えるものでも、別の立場から見たら「白」や「グレー」に見えることもよくあります。「どちらかが間違い」という姿勢では、その先の建設的な会話はできません。様々な人がいることで、その分学べる機会が多くあると思います。
水野さん:
リーダーの言動で、チームはいい方向に変わることも、悪い方向に向かうこともできます。リーダー一人ひとりが、会社を良くするために何が必要かという意識を持って、違いを尊重する姿勢を示すことで、チーム全体のマインドチェンジにつながっていくと思います。
また、女性管理職を増やすことに対し、「なぜ」と思っている人は、まだ一定数いるため、そこの理解を促進するコミュニケーションも必要だと考えています。人数を増やすことだけをゴールにせず、背景や理由を共有した上で、女性活躍を促進していけたらと思います。
カーデットさん:
多様なチームは、望む、望まないにかかわらず、今後増えていくことは明らかです。だからこそ、多様性のあるチームを適切かつ効果的にマネージメントできる準備が必要です。
チームに対しては、多様性が存在する利点を具体的に示すようにしています。あらゆる属性の違い、特に文化や宗教などについて、その詳細をすべて理解することは難しいですが、相手を尊重すること、そして論理的にコミュニケーションを取ることを心がけています。
多様なチームで働くことは常に挑戦の連続です。しかし、困難から多くの学びがあります。組織にとって、多様なチーム編成の重要性を認識し、中長期的に促進していく好機だと捉えています。
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