
ダッソー・システムズ株式会社
ダッソー・システムズは、1981年の設立以来、3DEXPERIENCE®カンパニーとして人々の進歩を促す役割を担い、企業や個人に対して、持続可能なイノベーションを実現するためのバーチャル コラボレーション環境を提供している。
ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを通じて、150ヵ国以上、あらゆる規模、業種の37万社以上に製品やサービスを創出、製造することで持続可能な革新を生み出し、価値を提供している。
公式サイト:
https://www.3ds.com/ja/(日本語)
https://www.3ds.com/(英語)
- The company: ダッソー・システムズ株式会社
- Service:
リーダー活躍のカギは、ポテンシャル層の「連帯」と継続的な「実践」 ~女性役員3名によるイニシアチブ“WiLD”の挑戦~
多くの企業が女性活躍推進のための取り組みを進め、数値目標の達成を目指す一方で、本質的な人材育成、活躍の仕組みづくりには、意識の醸成を含めた長期的な変革が必要です。
フランスに本社を持つ世界的なソフトウェア会社、ダッソー・システムズの日本オフィスは、2023年に女性リーダー育成のためのイニシアチブ、“WiLD”(Women Initiative &Leadership Development)を立ち上げ、リーガル担当役員の金子菜穂さん、パブリック・セクター担当役員の橋田光早絵さん、そして人事担当役員のミルハウス邦子さんの3名の女性役員が運営を担い活動を進めています。役員自らが試行錯誤を重ねながら推進するイニシアチブは、女性リーダー候補のメンバーと共に、少しずつ変化を生んでいるといいます。WiLDがどのような想いでスタートし、どのように活動を進めてきたのか、3名にお話を伺いました。
ダッソー・システムズ株式会社ダッソー・システムズは、1981年の設立以来、3DEXPERIENCE®カンパニーとして人々の進歩を促す役割を担い、企業や個人に対して、持続可能なイノベーションを実現するためのバーチャル コラボレーション環境を提供している。 公式サイト: |
女性リーダー活躍のカギは、ポテンシャル層の「
~女性役員3名によるイニシアチブ“
三者三様のキャリアの実体験を生かして
―― お三方それぞれ異なる専門分野を持ち、ダッソー・システムズで役員を務められています。ご自身のキャリアの中で、女性活躍に対してどんな想いをお持ちでしたか?
金子さん:
“環境は変えられないと思っていた”
私は弁護士として米国系法律事務所の日本オフィスでキャリアをスタートしました。8人の同期の中で女性は私1人で、男性と肩を並べて夜中まで働き、クライアントからの急な依頼や接待なども含め対応していました。当時は、サステイナブルな働き方なのか疑問に思う一方で、大学でも司法修習中も常に女性は数人という環境が当たり前だったため、自分をいかに適応させるかに専心していました。
その後インハウスの法務部に転職し、2017年から当社に勤務しています。後に、当時の法律事務所の上司に「残っていたらパートナーになれたのに」と声をかけられたときに、環境や働き方を変えるという発想を持って行動していたら、弁護士事務所に残る選択肢もあったのかもしれないと思いました。その経験から、与えられた環境の中でキャリアを諦めたり、無理をしたりする人が出ないよう、後に続く人たちが少しでも働きやすい環境をつくりたいと思っています。
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執行役員APAC・デピュティ・ジェネラル・カウンセル&ジャパン・ジェネラル・カウンセル法務本部 金子菜穂 日本の大学を卒業後、司法試験に合格。米国系法律事務所にて勤務し、M&AやFinanceなどの案件を担当する。その後、日系製薬会社の法務部にて勤務し、様々なグローバル案件を担当。2017年、現職であるダッソー・システムズ株式会社にてリーガル・カウンセルとして勤務を開始し、ダッソー・システムズの日本ビジネスにおける法務全般を担当。慶應義塾大学経済学部卒業。 |
橋田さん:
“ジェンダーギャップを感じない職場がベンチマークに”
私が就職した90年代半ばは、男性は総合職、女性は一般職という感覚があった時代。私自身は、性差にとらわれずにキャリアを積むために社会人留学し、MBAを取得しました。キャリアの核になったのは、13年務めた外資系大手金融会社での経験です。女性が当たり前に活躍し、上司が女性で、部下が年上男性なことも珍しくなく、経営会議でも女性が臆せず発言している会社でした。私自身昇進してシニアバイスプレゼントを務め、誰もがのびのび働ける環境では、従業員がより帰属意識を持ち、会社全体のパフォーマンスが良くなると身をもって体験しました。
6年前にマーケティング部長として当社に入社し、日本において、以前の環境がかなり先進的だったと気づきました。入社当時、女性従業員は3割弱で、特に営業や技術職の女性はごく少数。大多数の年上男性に配慮して、女性従業員が根回しや気配りをしながら窮屈そうに物事を進めているように感じ、この不必要なプロセスをなくせたらと問題意識を持っていました。
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ダッソー・システムズ株式会社 執行役員パブリック・セクター統括本部⾧ 橋田光早絵 20年以上に渡り外資系金融機関(アメリカン・エキスプレス、シティバンク、BNPパリバ)にて一貫してマーケティングに携わる。シティバンク時代には“ベスト・ウーマン・サポーター・アワード”(銅賞)を受賞するなど、様々な規模のチームのリーダーとして組織開発、部下の育成に取り組む。テクノロジー業界へのキャリアの転換を図り、2019年よりダッソー・システムズ株式会社に参画。同社で5年以上に渡り、マーケティング担当役員として、企業ブランディング向上やビジネス開拓を推し進め、2024年4月よりパブリック・セクター統括本部長、同担当役員に就任。フランスの商業系グランゼコール(高等教育機関)、HEC経営大学院卒。MBA(経営学修士)を取得。 |
ミルハウスさん:
“表面的な女性登用ではなく、根本的な変革のために”
私は外資系製造業と日本の製造業を顧客とする外資系テクノロジー企業が長く、外資系でも、男性が9割という男性主体の組織の中でキャリアを積んできました。経営層も管理職も圧倒的に男性主体である場合、女性リーダーが中心になって女性活躍推進を進めていこうとしても、最初の一歩を起こしにくいと感じていました。
外資系企業の人事責任者として20年以上勤めてきましたが、「指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」という政府の数値目標に対し、「どの部門ならば女性の候補者がいるか?」と数字合わせになる場面も多かったように思います。本来は、長期的な組織づくりの視点を持って、全部門において男女問わず人材育成に取り組むべきです。部門によっては、市場に女性の中途人材が少ないことも事実ですが、だからこそ今から進めていく必要があります。当社には2018年に入社し、ジェンダー平等の実現に向けて、すべての階層において社内における女性比率50%を目指しています。
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ダッソー・システムズ株式会社 執行役員人事本部人事本部⾧ ミルハウス邦子 大学在学中から、広告代理店にて、主にテクノロジーイベント・セミナーの企画・運営・MCを経験し、卒業後、外資系人材コンサルティング会社にてキャリアをスタートし、以後現在に至るまで外資の製造業やテクノロジー系を扱う多国籍企業において勤務。 20年以上にわたり、外資系企業の人事責任者として、日本法人における、人事戦略・組織戦略・DEI推進・採用戦略・実行・人材開発・育成・リーダーシップ開発・後継者育成・エンプロイヤーブランディング・ビジネスプロセス改善、プロジェクト管理・新卒採用・研修・大学との連携プロジェクトなどに携わる。2018年 ダッソー・システムズに入社し、現職。米Temple大学FOX Business School (MBA取得)日本女子大学教育学部卒業。 |
「今の環境では無理」という声に衝撃をうけた
――2023年に女性リーダー育成のためのイニシアチブ、”WiLD”(Women Initiative &Leadership Development)を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?
橋田さん:
発端は、日本法人社長のゴドブから経営会議メンバーの金子と私に、女性のマネージャーを増やすために動いてほしいと声がかかったことです。彼はカナダ出身で、米国の当社グループ企業で女性のエンパワーメントやイニシアチブを見てきた背景があるため、日本でのジェンダー平等の面で遅れや、それによる会社全体のパフォーマンスの停滞を危惧してのことだと思います。
金子さん:
私たちは女性活躍の分野で経験があったわけではなく、また人事部門の協力が不可欠なことから、ミルハウスにも協力を仰ぎ加わってもらいました。現状を把握するため、マネージャー候補層の女性従業員10数名に対し、私と橋田で分担し、1対1の対面形式でインタビューを実施しました。結果として、半数以上がマネージャー職に興味を持っている一方、「この環境では無理」という発言が非常に多く聞かれました。
橋田さん:
ある程度予想はしていたとはいえ、実際に声を聞いて「このままでは優秀な人たちが辞めてしまう」と強い危機感を持ちました。
本社同様のプロモーション面など制度は整っているものの、直属の上司自身の働き方や部下のキャリアへの無関心さなど課題が浮き彫りになりました。また、営業職や技術職の働き方に対する課題もあり、そういった日常業務に加えてマネージャー職はとても無理という意見や、周囲に女性マネージャーがおらず働き方の想像がつかないという声もありました。
見えてきた課題をもとに経営会議でも議論の場を持ち、危機感を共有したことで、このイシアチブに対して全社でサポートする共通認識を持てました。
ミルハウスさん:
人事部が主体となって女性従業員向け研修など様々な取り組みを行っていますが、それとは別の枠組みとして、専門領域の違う二人の女性役員が中心となり、試行錯誤を重ねながら、企画から運営まで行っているのがこの活動の大きな特徴です。私はスポンサーという立ち位置で、二人を支援する側に回っています。
目指すのは、連携することで生まれる強さと実行力
――インタビューで見えた課題に対して、具体的にどのような活動を始めたのでしょうか?
橋田さん:
課題から見えてきたのは、ポテンシャル層の女性同士のネットワークの必要性です。同じような悩みがある一方、グローバルで縦割りの体制のため、これまでは部署を超えた横のつながりが希薄で、それぞれ孤立していました。特に営業や技術系の部署では、社内やクライアントとの会議で女性が1人という場面もよくあったため、まとまって連携することで課題を解決する力が生まれると考えました。そこで、WiLDの活動の軸を、ネットワーキングと対話、コミュニティづくりに置くことに決めました。
ミルハウスさん:
人事主体の女性活躍プログラムの場合、会社側で選抜、あるいは上司の推薦によって参加者を決め、プログラムが終わったら完了するのが一般的だと思います。WiLDの場合は、本人が自主的に参加し、自らの意思で判断して行動することが前提です。
また、グローバル全体で女性マネージャー比率を30%にする目標を掲げていますが、WiLDの活動はあえて人事的なKPIから切り離して、目先の数値に左右されずにチャレンジができるようにしています。これは皆で一緒に歩む、長いJourneyだと考えています。
*日本法人は2025年現在、女性マネージャー比率19%、女性役員比率40%
金子さん:
活動としては、毎年メンバーを募ってキックオフを行い、リーダーシップ関連のトレーニング、ネットワーキングイベントやランチなどの交流会を実施しています。ロールモデルがいない悩みに対しては、シニアバディプログラムを取り入れ、私たちも含め女性のディレクターレベルがメンターになり、参加メンバーと1対1で定期的にセッションを持っています。リーダーシップ関連のトレーニングとしては、DiSC®研修、会社の概要・戦略を考える研修、セルフリーダーシップ研修など、毎年異なるトレーニングを実施しています。
本社の女性役員が来日した際には、ラウンドテーブルを開催して交流し、パワフルなロールモデルに触れる貴重な機会になりました。当社のグループ全体のカルチャーとしては、女性も生き生きと活躍しリーダーになる土壌があります。こうしたイベントを通じて日本オフィスの現状が全てではない点も知ってもらいたいと思います。
女性活躍を日常のテーマに 意識を醸成する大切さ
――活動を通して、参加メンバーや周囲でどのような反応や変化がありましたか?
ミルハウスさん:
オールハンズ(全社会議)では、WiLDの活動報告を必ず入れてもらっていますが、当初は社内で「毎回入れる必要があるのか?」という疑問の声もありました。これには意図があって、女性活躍のテーマが一過性の「アドオン」でなく、継続的に取り組む「日常」だというメッセージを伝えるためです。たとえ批判的な意見が出たとしても、活動が可視化されたというポジティブな変化だと捉えています。最近では疑問の声はなくなり、会社としての姿勢が定着してきました。「当たり前」として意識を醸成し、社内の各層の意識を変えていくことが大事なポイントだと思います。
橋田さん:
活動を継続する中で、活動報告の発表者に立候補するなど、メンバーの積極性が増していて、振る舞い方やリーダーシップの面で目立って変化を感じるメンバーが出てきています。自ら動き、全社に発信する経験は、自信につながります。連帯して、助け合いながら成長していく仕組みに手ごたえを感じています。
金子さん:
2年目には国際ガールズデーを記念するチャリティイベントをメンバーの立候補制で企画運営しました。メンバー主体の活動により、会社との接点も増え、リーダーになるためのステップになっていて、今後もより主体的な活動を増やしていきたいと思っています。
また、社内で横のつながりが醸成され、雰囲気がよくなったと実感しています。男性従業員からもWiLDの話を聞かれることも多く、私自身の見え方も、法務担当としてだけでなく、会社全体のために動いている役員という印象に変わってきたと感じます。
役員同士の絆もロールモデルに
ミルハウスさん:
私たち3人の関係性もこの3年間で大きく変わり、WiLDの企画会議で話す内容がより会社視点になったと感じます。女性活躍のテーマに限らず、問題点を共有し「どう良くするか」を議論し、経営会議で提案することもあります。専門分野も世代も様々で異なる視点がある一方で、「これはおかしいよね」は共通。私たち自身が連携することで得たものも非常に大きいですね。
「ロールモデルがいない」といいますが、1プレイヤーのモデルに頼ると、「この人は私とは違う」という発想に陥りがちです。組織の在り方、例えば私たち役員のリレーションシップも1つのロールモデルの形であり、WiLDが目指す連帯を体現できていると思います。

経営層の熱量や本気度で組織は変わっていく
―――最後に、社内で同様の取り組みをしている人や実施を考えている人へのアドバイスやメッセージをお願いします。
金子さん:
活動のスタートとして、当事者の女性従業員の声を聴くことは非常に重要です。会社によって環境や従業員の属性も異なっているので、現状を把握し、その現状にあった活動を設計する必要があります。
また、質問や聞き方が偏っていると正しい現状を把握できません。質問内容は本人のなりたいイメージから入るように気を配りました。例えば、「あなたのリーダーのイメージは何ですか?」「どんな変化があったら、あなたはリーダーになりたいと思いますか?」「リーダーになるためには、誰のどんなサポートが必要ですか?」などをオープンクエスチョンで聞くことで、より本質的な課題に触れられたと思います。
橋田さん:
担当業務に加えて活動することは負担に見えるかもしれませんが、時間など費やすリソースよりも、得るものが圧倒的に大きいと伝えたいですね。特にジュニア層のうちは、そういった実体験が少ないと思いますが、会社のために主体的に動くことで、人間関係や会社への理解が深まり、会社を俯瞰でみる視点が培われ、働くことの面白みが増します。
今後は、男性従業員の中でも近い志のある人たちにもブリッジしていきたいと考えています。女性に限らず、例えば若い世代が言いたいことを言えない環境だとしたら、会社は競争力を失います。良いと思ったことをぶつけてトライアンドエラーができる環境、ひとりひとりが仕事をしやすいカルチャーを育むことが、結局は会社のパフォーマンス向上につながります。
ミルハウスさん:
女性活躍の推進は多くの企業が取り組んでいる一方、まだ成功がパターン化されていません。変化を生むためには、自ら動いて試行錯誤するしかないと思っています。部門長や役員が名前を連ねるだけでなく、実際に関わって、動いているかどうかは参加するメンバーや会社全体にも伝わります。経営層がオープンで本質的な議論の場を持ち、たとえ手探りだとしても、会社のために取り組んでいる姿を見せることが重要です。
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