
味の素株式会社
味の素グループは、“Eat Well, Live Well.”をコーポレートスローガンに、アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献し、さらなる成長を目指しています。味の素グループの2024年度の売上高は1兆5,305億円。世界31の国・地域に拠点を置き、世界での事業展開企業数は121にのぼります(2025年現在)。
- The company: 味の素株式会社
- Service: DEIステートメント制作
ワークショップを経て、味の素グループDE&Iステートメントおよびステートメント動画を制作。従業員一人ひとりが自分ごととして捉え、対話と共感を生むきっかけに。味の素グループDE&Iステートメントは、DE&Iを考える上で多くの人にとって支えとなるものです。さらに、文章として頭で理解するだけでなく、心に訴えかけるように映像化することは、意義のある試みだと感じました人事部DE&I推進グループ 赤坂梨絵さん、藤浪好子さん、グローバルコミュニケーション部 尾城淳一さん
課題
- 会社としてDE&I推進に取り組んでおり、企業姿勢に対する社内の認知度は高いものの、従業員一人ひとりが自分ごととして推進するのは難易度が高い状態にあると感じていた
- 味の素グループのDE&I推進の考え方を全社に浸透させていく上で、従業員全員の“よりどころ”となる指針がなく、理解・共感を得るための基盤を新たに整える必要があった
ソリューション
- 人事部のメンバーが中心となり、ワークショップ形式で味の素グループのDE&Iステートメントを策定
- ステートメントをもとに味の素グループDE&Iステートメント動画を制作。一人ひとりが自分ごとと捉えるきっかけとして味の素グループ内外に展開
成果
- 国内外全ての従業員がDE&I推進の‟よりどころ”として立ち返ることができるDE&Iのステートメント、およびDE&Iステートメント動画完成
- DE&I推進を味の素グループ全員の成長と部門や国境を超えた多様な視点の共創によるイノベーション創出に繋げるための対話のきっかけとして活用を開始
味の素グループは、2008年から多様性推進に取り組んでおり、その結果、DE&I推進に対する企業姿勢は、社内に広く理解されつつあります。一方で、「従業員一人ひとりがDE&Iを自分ごととして捉えられているか」という点については、まだ課題がありました。そこで、味の素グループとして「なぜDE&Iを推進するのか」を伝える味の素グループDE&Iステートメントを制作し、さらに味の素グループDE&Iステートメント動画にして発信することで、従業員のDE&I推進への理解と共感をより深め、アクションに繋げることを目的に本プロジェクトをスタートしました。
人事部DE&I推進グループの赤坂梨絵さん、味の素グループDE&Iステートメント動画制作を中心に担当している人事部DE&I推進グループの藤浪好子さん、味の素グループDE&Iステートメント動画のディレクションを中心に担当しているグローバルコミュニケーション部の尾城淳一さんの3名にお話を伺いました。
ワークショップを経て、味の素グループDE&Iステートメントおよびステートメント動画を制作。従業員一人ひとりが自分ごととして捉え、対話と共感を生むきっかけに。
従業員一人ひとりが自分ごととして接点を持てるDE&I推進の指針を
――まず、本プロジェクト実施にあたり、どのような問題意識や課題をお持ちでしたか?

Photo: 人事部DE&I推進グループ 赤坂梨絵さん
赤坂さん:
昨年度(2024年)、味の素株式会社におけるDE&I浸透の状況をより深く把握するため、200名以上の従業員の協力を得てヒアリングを実施し、多方面にわたる様々な部署、異なるグレード、男女共から、率直な意見を聴くことができました。
そこで見えてきたのは、全社的にDE&Iへの理解度は高い一方で、「DE&I推進は、ジェンダーだけを対象としている印象で違和感がある」「障がいのある人など当事者が考えることでは」などの声もあり、DE&Iを自分に関係のあることとして捉えることが難しいという現状でした。DE&Iはもっと広い視点で捉える考え方であるはずなのに、自分には遠いものだと感じている現状が浮き彫りになり、打ち手を講じる必要性を感じました。
同時に、「味の素グループのDE&I推進はなぜ進まないのですか?」と質問される場面が多くあり、誰もがいつでも“よりどころ”として参照できるツールの必要性を感じていました。
そこで、味の素グループが「なぜDE&Iを推進しようとしているのか」「どこに向かいたいのか」を伝えるステートメントを制作し、これを動画にして発信したいと考えました。
尾城さん:
私はグローバルコミュニケーション部に所属していますが、人事部から声をかけてもらい、味の素グループDE&Iステートメント動画制作からプロジェクトに加わりました。生まれつき耳が不自由で、話したり聞き取ったりすることが困難なので、今もこのインタビューにチャットを使って参加させてもらいました。
多様な人たちがいる中で、誰でもいつどんな人と一緒に仕事をする機会があるか分からないですよね。味の素グループDE&Iステートメント動画は、障がいのある人、外国籍の方など、自分がこれまで接点のなかった人と一緒に働くシチュエーションに出くわしたときの事前の心構えにもなるように、お互いの目線で協調しあう姿勢の大切さを伝えられる内容になったらと考えていました。
藤浪さん:
私も味の素グループDE&Iステートメント動画制作の過程でプロジェクト加わり、DE&Iについてこれまで以上に深く意識することが多くありました。
社内では、DE&I推進を理解し、前向きに受け止めている人が多い一方で、具体的な行動がわからず、行動を起こせない人が多いように感じています。例えば、障がいのある方や性的マイノリティの方への対応として、「自分の発言が相手を傷つけてしまうのでは」「何が相手にとって正しいことなのかわからない」という声を耳にしますが、相手を思いやる気持ちがあれば問題ないのではないかと思います。もし相手にとって望ましくない対応になってしまった場合、「ごめんなさい」「教えてください」といった言葉を伝え、関係性を築く行動を取っていくことが大切だと思います。

Photo: 人事部 DE&I推進グループ 藤浪好子さん
ワークショップでステートメントを決める過程にワクワクした
――赤坂さんは立ち上げから携わっていらっしゃいますが、味の素グループDE&Iステートメント策定はどのように進められましたか?
赤坂さん:
味の素グループDE&Iステートメントをつくるにあたり、関わってもらうメンバーの選定には非常に悩みました。パートナーとなる企業を決める際、複数社に相談をした中で、唯一ワークショップでのステートメント策定を提案いただけたのがTDC Globalでした。その提案にとてもわくわくしたんです。人事部の中ですらDE&Iの捉え方は様々あるのだろうと感じていましたが、これまで全員で話して1つにまとめる機会はありませんでした。そのため、ワークショップではどんなことが起こるのだろうと参加メンバーはドキドキしていたと思います。
――ワークショップでは、役職にかかわらず積極的に参加いただき、意見が飛び交っていたのが印象的でした。
赤坂さん:
執行役(ダイバーシティ・人財担当)から一般社員まで、人事のメンバーが幅広く集まり、とてもフラットに、本音で話していたと感じました。他部署から参加してもらう選択肢もありましたが、ワークショップでつくる過程に責任を持つ意味で、人事部のメンバーに絞って、その中でも外国籍の方の意見、女性の意見、若者層やマネージメント層の意見など、意思決定の場に多様性を持たせられたのが良かったと思っています。TDC Globalがファシリテーションを担当してくださったので、私も純粋に楽しんで参加できました。役職や誰の意見だからということもなく、自由に発言できる場になり、また、TDC Globalに入っていただけたことで、グローバルの視点も盛りこんで進められた点もよかったと思っています。
最終的に味の素グループDE&Iステートメントをつくり込んでいく過程では、人事部外のDE&I推進に関わってくださる国内外のメンバーからのアドバイスも得ました。振り返ると、大変だったことより良かったことがたくさん浮かびます。
藤浪さん:
味の素グループDE&Iステートメントは、DE&Iを考える上で多くの人にとって支えとなるものです。さらに、文章として頭で理解するだけでなく、心に訴えかけるように映像化することは、意義のある試みだと感じました。
多様な個性が集まり、協働する姿を、色彩やアニメーションで表現
――ビデオ制作では、尾城さんがビジュアルディレクションを担当されたそうですが、どんなことを意識されましたか?

Photo: グローバルコミュニケーション部 尾城淳一さん
尾城さん:
少しでも多くの人に見ていただいて共感してもらいたいという想いで、印象に残る演出を意識し、ビジュアルの細部までこだわりました。
特に意識したのは、DE&Iというテーマを“映像”で伝える利点を最大化すること。多様性や共創の価値は、言葉だけでは伝わりきらない部分も多く、感性的な表現によって初めて心に響くメッセージになると感じました。だからこそ、単なる動画ではなく、見る人の感性に訴えて、誰もが見やすく、前向きな気持ちになれるデザインを追求し、「未来への価値創造と持続的成長への願い」を込めています。
視覚的かつ直感的にDE&Iの本質を伝えるために重視したポイントは3つで、①色とトーンの工夫によるメッセージ訴求、②アニメーションによる共創と成長の表現、③メッセージの伝わりやすさ・視認性の追求です。色彩やアニメーションの変化を通じて、多様な個性が集まり、協力し合いながら障壁や困難を乗り越え、共に成長し続ける姿を描いています。
線で描くシーンで色が移り変わる演出は、娘が手芸で使っていたレインボーの毛糸の色合いからインスピレーションを得ました。色鮮やかな色合いと細いラインで繊細な色の変化を見せれば良い仕上がりになると自信を持ちました(笑)。
赤坂さん:
味の素グループDE&Iステートメント動画制作は、グローバルコミュニケーション部と人事部のDEI推進チームの合同チームで毎週のように議論して、TDC Globalと連携しながら進めました。当初、人事部ではコーポレートカラーの赤を基調にするイメージを持っていましたが、赤から多様な色に変わることで、インクルーシブな環境を表現するアイデアがとても良いと思いました。ワーキングチームにプロフェッショナルが加わってくださり、多様な視点があったからこそ実現した映像だと思います。
尾城さん:
視認性やユニバーサルデザインの観点からも、全ての方にメッセージがしっかり伝わるよう配慮しています。例えば、英小文字の‟g”は、書体によってグラムや9のように見えてしまう場合があり、誤認や読みづらさにつながることがあります。デザイン性だけでなく、誰もが直感的に読みやすいことを最優先に、書体を選びました。
藤浪さん:
ナレーションを入れていないため、内容が伝わりやすいように、テロップと文字の表示については、尾城さんに相談し、表示する秒数も調整しました。 大きなモニターで投影した際に、ナレーションがなくても文字が読みやすく伝わりやすいものになったと感じています。
完成した『味の素グループDE&Iステートメント動画』
属性だけによらないDE&Iが浸透するきっかけに
――お話を聞いていて、皆さんの思いが詰まったものになったことが伝わってきました。完成した味の素グループDE&Iステートメント動画はどのように活用されていますか? また、社内のDE&I推進への向き合い方が変わってきていると感じる面はありますか?
藤浪さん:
味の素グループDE&Iステートメント動画は社内の会議やワークショップで投影したり、社内食堂で流したりしていて、社内から少しずつフィードバックが集まっています。例えば、女性向けのキャリア研修では、「会社のDE&I推進への本気度が伝わった」「一人ひとりへの教育の重要性を感じた」「動画をきっかけに課題に対する意見が出しやすくなった」「いい環境で働けているという実感が持てた」などの声が上がりました。
味の素グループDE&Iステートメント動画では、多様性について、一人ひとりの「知と経験・属性」と触れています。ある外国籍の従業員からは、「国の代表で来ているわけではないのに、自分の国の考え方ややり方を聞かれることにモヤモヤしていた。属性ではなく、個人の経験や意見にフォーカスしてほしいと思っていた」と意見をもらいました。
味の素グループDE&Iステートメント動画をきっかけに、課題を言葉にしやすくなり、意見も出しやすくなることで、より活発な対話が生まれるといいなと思っています。その積み重ねとして、インクルーシブな組織文化が醸成され、会社のイノベーションにつながっていくと考えています。
赤坂さん:
社内で味の素グループDE&Iステートメント動画を起点とした「対話会」の開催を始めました。動画を活用することで、味の素グループが目指す姿を理解してもらいやすく、意見が言いやすい環境を準備した上で、広くフラットに対話できるようになり、「女性」「障がい」「外国籍か否か」といった特定のテーマにとどまらず、それぞれが自分のこととしてイメージして発話してくれる土壌を用意できるようになってきたと感じます。
味の素グループDE&Iステートメント動画を見た若手従業員から「この動画で言いたいことは、僕と今目の前いる上司の2人がどう違いを認め合って、協働して、成果を出していくかの話ですよね」と、自分の言葉で語ってくれたときは本当に嬉しかったですね。
グローバルにも広く展開できる点も大きいです。英語版を海外の味の素グループに発信していますが、今後公的な会議の場でも紹介していくので、より広まるといいと思っています。
社外の変化を実感できるのはこれからだと期待していますが、味の素グループDE&Iステートメント動画を通して、味の素グループは、互いの違いを受容し、属性だけによらない多様な「知と経験×属性」を融合し、チームとしての力を結集する組織開発によってイノベーション創出を目指していることに共感してくださる方が増えると嬉しいです。

仲間を増やし、広め、グループ全体の働きやすさにつなげる
――最後に、本プロジェクトを経て今後の展望や想いを教えてください。
尾城さん:
自分としては、耳が聞こえないことを相手に伝えて仕事をする姿勢は変わらないので、物怖じせず、自分をさらけ出して堂々と仕事しています。本当にインクルーシブな環境づくりにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、少しずつ前進できたらいいと思います。
味の素グループDE&Iステートメント動画については、デザインのトレンド的にも長く使ってもらえて、多くの人が見ても違和感がない仕上がりになったと思っています。課題を挙げるとしたら、さらに多くの人に伝わるようアップデートしていくこと。自分はどんな音楽が流れているのか分からないし、視覚障がいのある人に対しては伝え方を考える必要があります。また、国によって、DE&Iへの感度や受容性にも温度差があるので、海外のグループ会社の人にとって英語版がどう受け取られるのかも気になっています。多様なお客様への想像力をさらに膨らませる必要もあります。そういう点は、今後に向けてブラッシュアップポイントを検討して継続的に発信していきたいと考えています。
藤浪さん:
このプロジェクトで、”推進力の支え”になる基盤を作り上げることができたと考えます。味の素グループとしてDE&I推進の‟よりどころ”ができ、共通の理解を持てることは、組織全体の一体感をつくり、多様な価値観を尊重し合える風土づくりに大きく貢献すると考えます。
味の素グループDE&Iステートメントを活用し、会社全体の働きやすさにつなげていきたいと考えています。今後は、共感し合いながら、共に活動できる仲間をさらに増やし、その輪を広げていきたいと思います。
赤坂さん:
味の素グループDE&Iステートメント動画を通して、お客様に貢献し、この会社を未来に残していくために、何をしていけばいいのか、どう変わっていくべきなのかについて、全従業員が共に考える機会になっていくといいと思っています。味の素グループDE&Iステートメントと動画を活用し、味の素株式会社の活動をリードしていくのがDE&I推進グループの使命であり、国内外グループ会社の先進事例を互いに学び合うことで成長と変化を加速できるよう具体的な行動に注力していきたいと思います。
※掲載内容は取材当時のものです
Interview & Text by Maiko Kataoka
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