CEO等向けワークショップをグローバルで実施し、経営視点のマインド醸成へ(事例:株式会社ニコン)

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課題:

  • 2023年4月に、ニコングループとして「Nikon Global DEI Policy」を策定、その内容を全社に浸透させるためにも、トップマネージメント層の意識改革とコミットメントが必須と考えていた
  • 国内外のグループ会社におけるインクルーシブな文化醸成のための取り組み度合いや意識に差がある中でも、ポリシーに腹落ち感をもち、各社でのより活発な活動が進められることを後押ししたいと考えていた

ソリューション:

  • 国内外のグループ会社のCEOを中心としたトップマネージメント層約60名を対象に、インクルーシブな職場作りに関するワークショップを企画、事前に組織サーベイも実施
  • グローバル共通のワークショップを日英で実施

成果:

  • 言語や地域の壁を越えて、各グループ会社のCEO等がオンラインを通じて同じワークショップに参加し「Nikon Global DEI Policy」についての共通認識を醸成する場を創出
  • ワークやディスカッションを通し、CEO等が各社の現状や課題を共有し、自社に持ち帰ることで、セッション後、次のアクションにつながるきっかけとなった

株式会社ニコンは、経営ビジョン「Unlock the future with the power of light」のもと、カメラをはじめ、FPD/半導体露光装置、顕微鏡、光学コンポーネント、金属3D プリンター、測定・検査システムなど、多彩な製品やソリューションを提供し、日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど 世界に約100の拠点を配し、グローバルに事業を展開しています。

今回、「Nikon Global DEI Policy」 の策定をきっかけにグループ全体で取り組みを推進する中で、トップマネージメント層の意識改革をグループ共通の優先課題とし、TDC Globalをパートナーとして、グローバル統一のトレーニングを実施しました。事務局として運営を担当された、サステナビリティ戦略部 青山 麻衣子さん、森田 文さんにお話を伺いました。

―― 本プロジェクト実施にあたり、どのような問題意識や課題をお持ちでしたか?

青山 麻衣子さん

青山さん:

2023年4月にNikon Global DEI Policyというグローバル共通のポリシーを策定し、社長から社員に向けてメッセージを発信しました。それだけでは定着しないため、このポリシーを実際に社内に浸透させていくための取り組みが必要だと感じていました。

国内外のグループ会社に対し、現状を把握するための調査を実施したところ、各社・各地域によってDEIへの理解度や意識の差にばらつきがあることがわかりました。どのようにすれば各社への後押しができるか事務局で議論する中で、取り組みの進捗度は異なっていても、DEIを推進していくためにはトップマネージメント層のコミットメントとリーダーシップが必要だと強く感じ、2024年度のグローバル共通のテーマとして、トップマネージメント層の意識改革とスキル開発に焦点を置くことになりました。

―― TDC Global と実施することになった経緯や理由をお聞かせください。

青山さん:

トップマネージメント層の意識改革をテーマに事務局内で議論を重ねる中で、各グループ会社の置かれている状況の違いや地域差はあるにしても、CEO等としてDEIに対する考えや視点は共通であるべきという結論に至りました。そこで、各地域で個別にトレーニングを実施するのではなく、内容を一本化し、グローバル共通のトレーニングをオンラインで実施することを決めました。

課題になったのが実施言語です。様々な検討の結果、日英の二言語で同じ内容のプログラムを実施することになりました。どちらの言語でも同様に気づきを得てもらうことができるか、クオリティの高い内容を提供できるかという点は海外メンバーが特に気にした点でした。

私たち日本の本社側が主導で動くため、プログラム実施のパートナーとしては、日本に拠点があり、かつ、海外のDEIに関する知見が広い企業が条件でした。リサーチする中で、欧州の担当者から、TDC Globalの名前が挙がり、WEBサイトから問い合わせしたという経緯になります。

実施に際し、言語面で大きく助けられたことはもちろん、国内外でのプログラム実施の実績があるため、多国籍・多文化での実施に際して配慮すべきことにおいてもアドバイスをもらえたことが助けになりました。

―― プログラム実施にあたり意識したことや苦労したことを教えてください。

森田 文さん

森田さん:

今回のようなグローバル規模のオンライン研修をやるのは前例がなく、比較対象やノウハウがない状態で企画を進めていく点で苦労しました。

また、異なる地域特性や背景を持つCEO等が参加するため、プログラム内容についてもさまざまな配慮が必要でした。たとえば、事例を用いる場合に、DEIというと、日本では女性活躍のイメージが強いのに対し、他の地域では人種や国籍、文化の差異が課題として意識されるなど、違いにも留意しました。会社による進捗度合いもさまざまで、ある会社にとっては進みすぎている事例だったり、逆に遅れすぎていて学びが無かったりといったことに陥らないようバランスも考慮しました。

TDC Globalのコンサルタントからは、「地域によって認識が違う状況を知ってもらうのも良い機会で、世界に視野を広げられる意義がある」といったアドバイスをもらうなど、一緒にプログラムを考える中で親身になって相談にのっていただき、助言をもとに良い形にたどり着くことができました。

青山さん:

今回のプログラムでは、各CEO等がこのテーマを自分事化して、リーダーとして行動面での気づきを得ることを一番に考えました。そのため、各子会社のCEO自身と従業員複数名に対して事前サーベイを実施したのですが、結果は、全社分をひとつにまとめたものだけでなく、個社分析も作成し、各CEOが、リーダーである自分と従業員とのギャップを見えるようにしました。約60社分の分析を作成するのは大変でしたが、そこを出発点に、気づきを得てもらえるよう意識しました。

――実施してみて、参加されたリーダーたちの反応はいかがでしたか?

青山さん:

事前に実施した各社のサーベイ結果を基にディスカッションする中で、他のグループ会社でも似たような課題があることや共通の傾向が浮かび上がったことなどを、お互いに共有できた点は意義が大きかったようです。また、各社のCEO等が、自社のことを念頭に置きながら、このワークショップでの成果をどう自社に持ち帰るかという視点を常に持ちながら臨んでくれていると感じました。

今回のトレーニングを受けて、独自の取り組みを開始したり、改めてサーベイを実施したりする会社も出てきており、各社で情報を共有したことがお互いに刺激を得る機会になったと感じています。

森田さん:

普段忙しいトップマネージメント層に時間を割いてもらうので、事務局としては、なるべく短時間にまとめて、実施は1回という形で設計しました。しかし、実際参加したCEO等の数名から、「もっと時間が欲しかった」という声があり、それぐらいポジティブに捉えて参加してもらえたことが事務局としては嬉しく思いました。

――プログラムの所感、感じられた変化などがあれば教えてください。

青山さん:

さまざまな環境の違いはあれ、経営者は孤独であることを感じました。今回、地域や事業部を超えて、全グループ会社のCEO等約60名が参加し、同じグループ会社のトップとして横に繋がり、コミュニケーションが取れたのは意義が大きかったと感じています。初めての機会だったので、集まることを楽しみに参加されている方もいましたし、新鮮な機会として捉えられ、参加者の反応は良かったと感じました。


また、Nikon Global DEI Policyへの理解が深まり、今回のワークショップを通じて改めて認識された課題に対し、各社で具体的に何か活動を進めようという動きも見え始めているので、短いセッションではありましたが、私たちの目的であった、インクルーシブな環境づくりを推し進める一つのきっかけにはなったと感じています。

森田さん:

日本語のセッションには、日本人だけでなく、中国、タイ、韓国など、いくつかの他の国・地域のグループ会社のCEO等も参加しました。日本語ではあるけれど、グローバル共通の、日本だけに向けたセッションではない点は、日本からの参加者にとって普段と違う刺激になったのではないかと感じました。

――本プログラムを経て今後の展望がありましたら教えてください。

青山さん:

今回のような機会を設けることで、各グループ会社のCEO等がリーダーとして自発的に取り組みを進められるようになってほしいという思いがあります。事務局としては、各地域、各社に対してフォローアップを継続しながら、具体的な取り組みや事例を各社のトップマネージメント層が共有できるようなプラットフォームづくり、仕組みづくりを検討していきたいと考えています。

※掲載内容は取材当時のものです

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